京都大学iPS細胞研究所の澤井努研究員らは、国内の一般市民と研究者に意識調査を実施。動物の胚にヒトの細胞を注入したヒト-動物キメラ胚の研究を許容すると回答した者でも、動物の脳や配偶子にヒトの細胞が混ざることには大きな懸念を示すことがわかった。
調査は2016年2月から4月の間に実施し、一般市民520名、研究者105名から回答を得た。その結果、ヒト-動物キメラ胚の作製を許容するとの回答は、一般市民80.1%、研究者92.4%。またヒト-動物キメラ作製を許容するとの回答は、一般市民64.4%、研究者83.8%だった。
従来、ヒト-動物キメラに関し倫理的問題が議論されてきた。ヒトの細胞が動物の脳に含まれると、ヒトと同等の認知機能が生じるのではないか、また動物の生殖細胞の系列にヒトの細胞が含まれると、ヒトと動物のハイブリッドや動物からヒトが誕生するのではないか、という問題だ。
そこで、調査では脳、肝臓、精子・卵子、皮膚、血液、心臓という6つの臓器、組織、細胞について、動物にヒトの細胞が含まれることへの抵抗感について尋ねた。その結果、一般市民も研究者も、特に脳、精子・卵子にヒトの細胞が含まれることに懸念が大きいことが判明した。
さらに、ヒトの細胞がどの程度(0~100%)含まれることを許容するかについて、臓器別に尋ねた。その結果、脳にヒトの細胞が寄与することは全く許容されない(0%)との回答は、一般市民48.5%、研究者45.7%であり、生殖細胞にヒトの細胞が寄与することは全く許容されない(0%)との回答は、一般市民52.1%、研究者74.3%だった。
この調査結果により、ヒト-動物キメラ研究においては、脳・配偶子のヒト化に関わる問題を回避する方策を検討する必要があるとされる。