京都大学の蔦谷匠 理学研究科・日本学術振興会特別研究員は、過去約1万年間の世界中の古人骨のデータを集め、離乳後から8歳までの子供と成人の食性を比較。食性は、子供と成人(女性・男性)でほぼ同じであったが、狩猟採集民と農耕民・都市居住民では食性にわずかだが違いがみられた。
ヒトの子供は、他の霊長類の中でも、離乳後も年上の個体から食物を与えられるという特徴を持っている。食物の提供を受けることで、ヒトでは子供の時期の死亡率が比較的低く抑えられるが、この時期の子供が実際に何を食べているか、さまざまなヒト集団について横断的に調べた研究はこれまでなかった。
そこで今回の研究では、過去1万年間程度の世界中の古人骨集団のデータをメタ解析し、離乳後の子供の食性を同じ集団の成人(女性・男性)の食性と比較。古人骨に含まれる炭素・窒素の安定同位体比には、生前の食生活の情報が記録されるため、これらの値を指標にすることで、子供と成人の食事の差(食物全体に占める植物の割合)を知ることができる。研究では最大36の古人骨集団のデータを使用した。
解析の結果、離乳後の子供と成人(女性・男性)の食性差は、あってもごくわずかだった。しかし、狩猟採集で生活する集団では、離乳後の子供、成人(女性・男性)の間に有意な食性差はなかったものの、農耕民・都市居住民の集団では、離乳後の子供>成人女性>成人男性の順で、食性のなかに占める植物の割合がわずかに高い傾向があった。離乳食として、農耕民は穀物や植物をよく用いる傾向があると先行研究によって示唆されてきたが、離乳後の子供が摂取する食物にも同様の傾向があることが、研究によってわかった。