地球温暖化のもと、北極海の夏の海氷面積はこの40年で半減した。国立極地研究所の柏瀬陽彦研究員、北海道大学低温科学研究所の大島慶一郎教授は、この海氷面積の減少が「海氷-海洋アルベドフィードバック」と呼ばれる効果が要因の一つであることを明らかにした。
かつて、北極海は一年中海氷に覆われる多年氷域だったが、今は夏に海氷がなくなる季節海氷域へとシフトしつつある。2012年9月には人工衛星による観測から、海氷面積が過去最小になったことが判明。2050年ごろには夏の海氷はほとんど消失するという予測もある。
海氷激減の要因はいくつか指摘されているが、今回、衛星観測による海氷データ等の解析から、海氷-海洋アルベドフィードバックが重要な要因であることが明らかになった。日射に対する反射率(アルベド)が、黒い開水面では白い海氷表面より小さい。海氷域で水開き(開水面:周囲が氷で覆われている、水面が見えている部分)がいったん広がると、開水面から吸収された日射による熱により海氷が融解。それがさらに開水面を広げて海氷融解を加速する。これが海氷-海洋アルベドフィードバックだ。
融解初期に海氷の発散量(海氷が拡がる方向に動く割合)が大きいと、このフィードバックが有効に働き融解が進む。2000 年代以降、多年氷などの厚く動きにくい海氷が減ることで発散量が増加し、フィードバックが働きやすくなったことが海氷激減の一因と考えられるという。
今回の研究成果は今後、季節海氷予報の実用化やフィードバック効果の全地球の気候への影響評価へと発展していくことが期待される。