慶應義塾大学大学院の久保田弾氏と徳岡雄大氏(共に研究当時は大学院生)らの研究グループは、高校数学で習う積分を高精度に行えるAIを開発。正解の精度は99%以上で積分ツールとしてはこれまでで最高精度となった。

 近年、被積分関数を入力して原始関数を出力するAIが構築され、これまでに計算機上で解けなかった数式の積分が可能になった。しかし、従来法では数式が持つ演算規則や順序といった情報をAIに反映できず、積分に最適化されたAIは構築されていない。

 研究グループは、高校で習う積分の数学的な処理が、近年発展の著しいAIによる言語翻訳などの変換と類似することに注目し、積分される関数(被積分関数)を入力すると積分された関数(原始関数)を予測することができるAIを開発した。また、AIが出した原始関数を微分して被積分関数と一致するかを判定することで積分の正誤判定が可能であることに着想を得て、様々なAIを構築、学習させて正解が出せたものを採択する方法を編み出した。

 この結果、実装したAIは99.79%の精度で積分が可能であることが示され、これまでに開発された積分ツールであるMathematicaや機械学習に基づく方法と比較して最高精度を達成した。さらにAIが学習した数式の特徴を調べることで、構築したAI毎に積分をすることが得意な関数や不得意な関数があることが明らかになり、相互補助的に積分に解答することでAIは高精度を達成することができた。

 積分は制御工学やシステム生物学におけるシミュレーションに必須の処理であり、今回の成果はこうした分野における、より正確なシミュレーションに貢献することが期待されるとしている。

論文情報:【IEEE Access】Symbolic Integration by Integrating Learning Models With Different Strengths and Weaknesses

慶應義塾大学

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