愛媛大学は北海道大学との共同研究で、別府湾の海底堆積物から過去2800年間に達するイワシ類の魚鱗化石を発見した。連続的な魚の個体数変動の記録としては世界最長となった。
世界の漁獲量の6分の1はイワシ類だ。世界有数漁場ではマイワシが減少するとカタクチイワシの漁獲量が増え、カタクチイワシが減ると今度はマイワシが増加する。数十年ごとの魚種交替によって世界の食糧供給が安定している。しかし、漁獲量が世界最大のペルー沖で、カタクチイワシ資源が崩壊したため、過去に世界一であった日本のマイワシ漁獲量の回復(日本沖の魚種交替は約20年ごと)が、世界の食料資源のゆくえに大きな影響を与えるとされる。
イワシ類の動態予測には、海底堆積物の調査により長期的な魚種交替の安定性を確かめる必要がある。日本周辺海域は魚種交替が世界で最も明瞭に現れるが、これまで海底堆積物の記録がなく、その安定性については不明だった。
今回、研究チームは大分県別府湾の海底堆積物中のマイワシ・カタクチイワシの鱗を発見。過去2800年間の魚鱗年間堆積量記録から魚の個体数の長期変動を明かにした。連続的な魚の個体数変動記録としては世界最長記録だ。
記録にはマイワシ・ カタクチイワシの数十年周期変動が度々認められたが、魚種交替を示す時期はわずかであった。むしろ、長期記録には100年規模の変動や長期減少トレンドがみられ、20世紀では観測された魚種交替以外にも多様な変動パターンがあり、イワシ類の資源量に安定性はみられなかった。
不安定性の原因は現段階では不明だが、今後、過去の気候変動に対するイワシ類の応答の理解が進めば、水産資源についての確かな将来予測が期待される。