公教育における情報教育の発展を目指す特定非営利活動法人みんなのコードは、Googleの協力のもと、日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査を実施した。

 みんなのコードは、定員が固定化された大学の現状において、情報系学部・学科志願者の増加に対し、大学の受け皿が不足しているのではないかという懸念のもと、「①情報系学部・学科への進学希望者と、入学者定員数の需給バランスの不均衡が発生しているのではないか」「②女子の情報系学部・学科の志願者・入学者が少なく、ジェンダーギャップが存在するのではないか」、以上2つの仮説について検証した。

 調査によると、国公立大学に絞っても、情報系学部・学科の志望者数は2011年の12,652人に対し、2021年は16,938人と34%増加した。一方、国公立大学前期日程の情報系学部・学科の定員は、2011年の5,087人から2021年の5,064人と横ばいであり、その結果、志望倍率は2.49倍から3.34倍へと上昇。志望者の増加に対する受入定員数が不足していることがわかった。私立大学についても同様の傾向といえる。また、情報系以外の理学部、工学部における女子比率は2011年から2021年にかけて微増しているのに対して情報系は微減していた。

 このほか、学校現場や産業界からの情報とあわせ、以下の3つの課題も見えてきた。1つ目は「地域間格差の把握」。今回、国公立大学に焦点を当てて調査を実施したが、私立大学も含めた調査によって地域間格差の全容を把握することが必要だといえる。

 2つ目は「情報教育における高校から大学への接続性の確保」。高校と大学での情報教育における学習内容の相互理解が必要。高校の教員が、生徒の適性や興味関心に応じた適切な進路指導ができるようになり、さらに大学の教員が高等学校「情報I」の学習内容を把握した上でのカリキュラム設計が必要となる。

 3つ目は「大学での教育内容の充実」。情報系の学部・学科の新設はスタートラインであり、重要なのは学生一人ひとりが充実した学びを実現し、社会に出て活躍すること。そのため、ジェンダーバランスにも考慮した優秀な教員の確保、卒業後も見据えたカリキュラムの設計等が求められる。

 2022年6月7日、内閣府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)を公開。「人への投資」を前面に押し出し、「デジタル化に対応したイノベーション人材の育成等、 大学、高等専門学校、専門学校等の社会の変化への対応を加速」「自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合についてOECD(経済協力開発機構)諸国で最も高い水準である5割程度を目指す」ことなどを掲げた。

 これは先月、高等教育をはじめとする教育の在り方について議論をする政府の「教育未来創造会議」にて取りまとめられた「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」の内容を反映しているもので、政府としてもデジタル人材が不足していること、諸外国と比較して全体的な理工系の入学者の割合が低いことなどに懸念を抱いていることが分かる。

 具体的な今後の対策として、デジタル等の成長分野への大学の再編・統合・拡充を促進する仕組みの構築、成長分野における定員増等が挙げられ、みんなのコードでは、今回の調査で明らかになった情報系学部・学科の需給バランスの不均衡を改善するものと期待を寄せている。

※全統模試データは、2011・16・21年度に高3・卒生を対象に実施した全統共通テスト模試(旧:全統マーク模試)を利用。受験者数は約40万人(年度により異なる)。

参考:【特定非営利活動法人みんなのコード】国内の大学における情報系学部・学科の実態調査 

大学ジャーナルオンライン編集部

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