安倍政権が掲げる大学教育の全面無償化について、財務省は財政制度審議会で反対の意向を表明した。このままでは定員割れや赤字経営の大学に対する単なる経営支援になりかねないとし、無償化を低所得者層の子どもに限定するよう求めている。
財務省が財政制度審議会に提出した資料によると、日本の教育に対する公財政支出がOECD(経済協力開発機構)加盟国で最低水準と指摘されることに対し、教育支出に占める公財政支出の割合を在学者1人当たりで見ると英国の34%に次ぐ32%で海外に比べてそん色のある状況でないと指摘した。
そのうえで、大学進学率や学位保持率も国際的に見て高水準にあるとし、負担軽減は真に支援を必要とする低所得者層の子どもに絞るべきだと主張。全面無償化は高所得者層の子どもに受益が及び、格差解消につながらないとした。同時に、無償化が赤字経営の大学を支援するだけに終わらないよう制度設計すべきとも訴えている。
授業料を国がいったん肩代わりし、卒業後に本人の収入に応じて返済してもらう出世払いの仕組みは、親の所得を問わずに適用することを想定しているため、格差解消に懸念があると主張した。卒業後の年収を追跡する事務が煩雑になることから、実現の可能性にも課題があるとしている。
大学の特色ある取り組みへの特別補助額は2016年度、定員割れの私立大学で166億円に達し、2012年度に比べてほぼ倍増している。このため、経営改善が認められない大学には補助を廃止するよう求めた。