前富山市長の森雅志富山大学客員教授らがまとめた論文「地方自治体による鉄軌道政策の成果と課題に関する研究」が、学術誌「実践政策学」に掲載された。森教授が市長時代に推進した新型路面電車(LRT)の成果と地方鉄道政策に対する提言で構成された論文で、コンパクトシティの実現と地方鉄道の今後のあり方に一石を投じている。
富山大学によると、著者は森教授のほか、富山大学学術研究部の中川大特別研究教授、富山市の本田信次政策監、高森長仁軌道整備事業安全統括管理官、谷口博司前路面電車推進課指導官。
富山市は市街地が郊外へ無秩序に拡大し、中心部が空洞化する状況を打開するため、2005年ごろから政策方針を大転換し、新型路面電車の「富山ライトレール」整備などで公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトシティを推進した。
論文はこうした政策に至った経過や背景、狙いをあらためてまとめたうえで、
・鉄軌道を事業採算性だけで評価する発想を変える必要がある
・欧州のように自治体が公共交通の水準を定め、一定の責任を負う国の制度が必要
・自治体による鉄軌道への公費支出を積極的に実施すべき
・公共交通を軸にした長期的な都市づくりを自治体が主体的に取り組む制度が必要
-などと提言している。
実践政策学の査読委員会は「LRT導入の経緯や狙いは全国の交通まちづくり実践者に有益」と評価している。