横浜市立大学の加藤英明講師らの研究グループは、日本語での歌唱・発音による飛沫飛距離やエアロゾルの発生量を観察。日本語歌唱では前方左右60~70cm程度に飛沫が拡大し、微細なエアロゾルはu母音や「か行」「た行」「は行」「ぱ行」で多く発生することが分かった。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は主に飛沫とエアロゾルにより感染拡大する。合唱による集団感染事例の報告は多く、飛沫・エアロゾル発生リスクが高いとされる。

 今回、全日本合唱連盟、東京都合唱連盟と共同で少年少女からシニアまで男女10人ずつアマチュア合唱団からメンバーを募集。新日本空調株式会社のクリーンルームとレーザー光を用いた飛沫可視化装置を用いて日本語歌唱での飛沫観測研究を行った。

 日本語歌唱(「大地讃頌」)では、歌唱者の前方最大61cm(ドイツ語「第九」では111cm)、横方向にも最大70cmの飛沫を確認。飛沫飛距離に男女差はなかったが、パーティクルカウンターの計測による口元発生の微細エアロゾルの数は、男声よりも女声の方が有意に多く観測された。

 また日本語の朗読でのエアロゾル発生はaとe母音では少なく、u母音では有意に多かった。子音では「か行」「た行」「は行」「ぱ行」でエアロゾルが多かった。歌唱者が不織布マスクを着用するとエアロゾルは観察されなかった。

 飛沫吸入を避けるには、前方左右に1~2m以上の距離確保が重要という。またエアロゾル対策には十分な換気が必要だが、換気条件が不明な場所ではa母音での歌唱やマスク着用により、安全な合唱練習が可能としている。本研究を基に「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン(全日本合唱連盟)」が発行された。

論文情報:【PLOS ONE】Expansion of droplets during speaking and singing in Japanese

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