東京大学の浜根大輔技術専門職員はアマチュア鉱物研究家の斎藤勝幸氏と共同で、北海道で産出する砂白金から数十種の白金族鉱物を発見。砂白金が多様な鉱物の集合体であることを明らかにした。また、苫前町で採集された砂白金には新種の鉱物「苫前鉱(とままえこう)」が含まれることを突き止めた。
日本では明治中期に北海道において砂白金の産出が初めて確認され、大正期以降、万年筆への利用法開発から乱獲され入手しにくくなった。そのため、自国産の砂白金の鉱物構成などの理解があまり進まなかった。
研究チームは戦時中の乱獲を免れた砂白金鉱床が北海道北西部に残っていることを期待して探索を実施。その結果、南北に70km、東西に30kmの範囲にまたがった調査において計8か所で砂白金の採取に成功した。その砂白金に対し、本格的な調査を開始した。
走査型と透過型の電子顕微鏡を用いて詳細に調査したところ、砂白金から40種を超える白金族鉱物を見出した。日本の砂白金は決して単純ではなく、実に多様な鉱物で構成される集合体であることが明らかとなった。
また、苫前町の海岸で採集された砂白金に包有される最大20μm程度の微細粒子が見つかった。それはプラチナと銅が1:3となるこれまで知られていない化学組成であり、新種の可能性が浮上した。そこで、結晶構造解析を行ったところ、立方体の角にプラチナを置いて各面の中央に銅を置いた構造と判明。「苫前鉱(とままえこう、学名:Tomamaeite)」と命名した。
苫前鉱はプラチナの天然における新しい存在様式を体現したもの。研究グループは今後、それを生み出したユニークな地質環境の解明や、未知の鉱物の発見に取り組んでいきたいとしている。