東京工業大学の野島達也特任助教らの研究グループは、鶏卵の卵白たんぱく質から高強度ゲル材料「卵白たんぱく質凝縮体ゲル」を作製することに成功した。医療用素材や食品開発への応用が期待される。

卵白は加熱すると固まる(ゲル化する)が、圧縮強度が低く材料開発の素材になりにくい。研究グループは、独自のイオン性界面活性剤を加えて、水中のたんぱく質を一瞬で凝縮する技術を2016年に開発していた。

今回この技術を用いて、卵白たんぱく質に陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤を一定の割合で添加すると、ゲル化現象に関わるたんぱく質を含む透明液状物質(卵白たんぱく質凝縮体)が水相と分離して発生。内部でたんぱく質が一定の間隔で集積していることが判明した。

次に卵白たんぱく質凝縮体を70度で加熱すると白く不透明に固まり、この物質が内部に80%の水を含むハイドロゲル(卵白たんぱく質凝縮体ゲル)であり、また、たんぱく質分解酵素によって分解されたため、たんぱく質によるネットワーク構造が形成された生分解性(微生物により分解される)物質であることが確認された。

今回作製した卵白たんぱく質凝縮体ゲルは、17分の1の厚みに薄くつぶれるほど柔らかいが、通常のゆで卵の白身の150倍以上の強度(1円玉への1トンの圧力に相当)を示した。卵白より作製された物質の強度としては世界最高であり、化学合成による高強度ハイドロゲル材料に劣らない強度であることが確認された。

今回の研究成果は、たんぱく質を素材として、体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材など、実用的な強度を持つ新たな機能性材料や、新たな食感の食品の開発への応用が期待される。

論文情報:【NPG Asia Materials】Egg White-Based Strong Hydrogel via Ordered Protein Condensation

大学ジャーナルオンライン編集部

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