原始星と呼ばれるできたての恒星が竜巻状に回転する高速ガス流を放出していることを、鹿児島大理工学域の半田利弘教授(電波天文学)らの研究グループが、国立天文台のVERA望遠鏡を用いて世界で初めて確認しました。ガスが集まって星が成長する仕組みの解明に迫る発見で、英国の学術論文誌「英国王立天文学会月報」に掲載されました。
半田教授によると、研究グループは、地球から5,100光年離れたぎょしゃ座の原始星S235ABを、VERA望遠鏡を使って1年3カ月に渡って観測しました。原始星の周囲ではガスが円盤のように回転するとともに、円盤の垂直方向にガス流が吹き出しています。垂直方向のガス流に含まれる水分子を追跡すると、竜巻状に回転して高速で離れていく様子が確認されました。原始星が成長するためには、周囲のガスを取り込まなければなりませんが、竜巻状にガスが回転することで円盤の回転が遅くなり、ガスを取り込むことが可能になるそうです。
この研究成果は、生まれてきた恒星がどのように成長していくのかを理解するうえで、非常に重要な発見といえます。半田教授らは今後、恒星から吹き出すガスの量を見積もるために、国内外の他の望遠鏡を用いた観測を予定しています。
鹿児島大で記者会見した半田教授は「長年の謎であった恒星形成の際に円盤の回転がどのように遅くなるのかについて、複数の仮説が提唱されてきたが、さらに研究を進めて決定的な答えを出したい」と述べました。