奈良先端科学技術大学院大学の中村哲教授らの研究グループは、奈良県立医科大学と共同で、コンピュータ画面上の仮想の「人」によるソーシャルスキル練習システムを開発した。現在、実証試験を開始している。
ソーシャルスキルとは1人以上の人との対話中における言語的および非言語的行動を管理できる能力のことを指す。他者と対話するのが困難な人々は、自らの社会的行動を適切に管理し、他者の社会的行動を解釈することを苦手にしている。
研究グループは、コンピュータ画面に登場する人型の仮想エージェントによりソーシャルスキルを練習するためのシステムを開発した。このソーシャルスキルトレーニング(SST)システムは人間のトレーナのデータに基づいている。音声認識によりユーザの発話を認識し、システムが応答を行う。その後、社会的行動の特徴セット(音声、表情、視線、ジェスチャー、発話内容など)を抽出し、それらを用いてソーシャルスキルを予測。ユーザのよく出来ている点と改善点を提示する。
中村教授らは、自閉スペクトラム症者、統合失調症者、定型発達者を対象としたデジタルセラピューティクス(疾患に対する治療介入を提供する治療用アプリなどの総称)の構築を目指している。すでに、奈良県立医科大学でのグループデイケア、リワークプログラムにおいて、SSTシステムの実証試験を開始した。
今後、SSTシステムが、医療リハビリテーション、デイケアの一部に組み込まれて行けば、さらに普及が進み、オンラインによる自宅での練習と合わせてソーシャルスキル向上の相乗効果が期待できるとしている。
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