横浜市立大学国際商学部の黒木淳准教授(大学院データサイエンス研究科)らの研究グループは、総合福祉研究会の社会福祉法人財務分析プロジェクトチームと共同で、全国に約2万ある社会福祉法人の財務諸表データを用いた財務偏差値システムを開発し、運用を始めた。希望する社会福祉法人に対し、経営改善に向けた参考情報を提供する。
横浜市立大学によると、研究グループは科学的な知見に基づき、社会福祉法人の意思決定に有用な7つの指標を選定し、介護や保育など主要な福祉サービスごとに社会福祉法人を分類、法人ごとの財務偏差値を算定した。各法人が財務偏差値を見ることで自律的な経営改善を支援できる仕組みに仕上げている。
研究グループはシステムの開発に当たり、成功を経験して失敗を避けたいという欲求で動機づけられるアスピレーション・レベル(目標値)の理論を参考にした。財務業績の実績値が目標値を超すと、経営者が現状に満足したり、関心を持たなくなったりするアスピレーションの欠如が起きるが、社会福祉法人でも一般企業と同様にアスピレーションの欠如が起きている可能性を想定し、財務偏差値を見てアスピレーションを高められるように工夫を加えている。
研究グループはこのシステムが社会福祉法人経営者のアスピレーションを刺激し、結果的に福祉サービスの質的向上が実現することを期待している。
参考:【横浜市立大学】社会福祉法人財務偏差値システムの運用を開始 総合福祉研究会社会福祉法人財務分析プロジェクトチームとの共同開発