大阪公立大学とパナソニックコネクト株式会社は、2022年12月1日から全国の小中学校・高校などの教育現場に対し、子どもたちの潜在的なSOSを早期にキャッチし適切な支援につなげる「YOSS クラウドサービス」の提供を開始した。
昨今、不登校の児童生徒は約19万6千人(「文部科学省初等中等教育局 令和5年度概算要求 主要事項」より)と8年連続で増加しており、いじめによる事件、居所不明児童生徒、少年事件等、子どもを取り巻く様々な問題が深刻さを増している。特にコロナ禍以降の不安定な社会情勢により、貧困・孤独・虐待など子どもの環境は、一層厳しいものとなっている。
一方、初等中等教育の現場で働く教員は多くの業務を抱え、子どもの日常生活の変化の伝達・共有・課題支援決定を行う仕組みが組織として十分に整っていない場合が多い。そのため個々の教員に課題の抱え込みが生じやすく、相談機関との連携体制へと動いていくことにも課題があり、子どもの適切な支援につながりにくい現状がある。
このような社会状況を背景に、子どもの隠れたSOSに気付き、潜在的に支援が必要な子どもや家庭の早期発見・支援につなげるべく、2018年、大阪公立大学大学院 現代システム科学研究科の山野則子教授らは「YOSS(Yamano Osaka Screening System(R)、ヨース ※特許申請中)」を開発した。児童生徒一人ひとりの欠席日数・行動・身だしなみ・家庭環境などの情報を教員がスクリーニングシートに点数式で記入。YOSSの判定をもとに支援の方向性を校内で協議して決定、学校・地域・専門機関が連携して支援を行うというもの。
「YOSS」は客観的なデータに基づいてチームで対応の方針を決めるため、教員が一人で抱え込むことも解消でき、さらに、身近な地域資源を活用することで子どもたちは気軽に参加でき、地域は必要な子どもに支援を届けることができる。すでに33自治体211校が導入し、具体的な効果として、不登校の児童生徒数が1/3に減少、遅刻早退などが7割改善、諸費滞納が8割改善という自治体が生まれている。また、組織として、支援内容の決定スピードが10倍近くも向上し、教員の負担が軽減される傾向がみられ、教育現場における諸問題の改善効果が表れている。
そこで今回、パナソニックコネクトのサービス開発のノウハウを活かし「YOSS」の機能をクラウド上にシステム構築した「YOSS クラウドサービス」を12月1日より全国に提供する。山野教授が目指す「すべての子どもたちの潜在的なSOSを早期にキャッチし適切な支援につなげる」というテーマの実現に向け、全国の教育現場に展開し、さらに地域とつながることで、子どもたちを誰一人取り残さない持続可能な社会の実現を目指す。
参考:【パナソニックグループ】すべての子どもたちの潜在的なSOSを早期にキャッチし適切な支援につなげる「YOSS クラウドサービス」を12月1日から提供開始