学術出版社エルゼビアは、科学研究に対するコロナ禍の影響について初となるグローバル調査を行い「科学研究への信頼 Confidence in Research:スポットライトを浴びる研究者たち(英語)」を発表した。
調査は2022年5月から8月にかけて世界100カ国、数十の分野にまたがる3,144人の現役研究者を対象に実施。「現役」とは、過去3年以内に論文を発表した研究者を指す。
調査によると「コロナ禍で研究に対する社会の注目度が高まった」と感じている人は約3分2(63%)。一方で、新型コロナウイルスによるパンデックのおかげで「研究に対する社会の理解が向上する」と考えている人はわずか38%にとどまった。
研究の信頼性を決める最も重要な指標は「査読付きジャーナルへの掲載」と回答したのが74%。「ソーシャルメディアで研究成果を伝える」ことについては、「非常に自信がある」と答えた人は18%にも達しなかった。オンラインで研究を投稿した後に誹謗中傷に遭ったことがある、あるいは親しい同僚が誹謗中傷に遭ったと答えた人は約3分の1(32%)にのぼった。
さらに、「オンラインでの議論に参加する責任を感じている」と51%が回答。そして「質の高い研究と偽情報・誤情報を分ける重要性がコロナ禍で高まった」と69%が回答した。実際に、偽情報・誤情報は近年世界的な課題となっており、回答した研究者の4分の1近く(23%)が、偽情報・誤情報を公の場で対処することは自分たちが社会で果たすべき主要な責任の一つであると認識している。パンデミック前には、この数値はわずか16%だった。
日本の結果を見ると、日本の回答者の半数は「パンデミックによって研究テーマに対する資金提供者の影響力が増したと感じている」と回答。また、日本の研究者の50%以上が、パンデミックにより研究全般に対する一般の関心や注目度が高まったと感じている。パンデミックがきっかけで研究実施方法に対する監視の目が厳しくなるだろうと回答したのは38%だった。オンラインやソーシャルメディアを通じた研究議論は自分の評価を高める上でも重要だと考える一方で、20%がソーシャルメディアでのコミュニケーションスキル不足を自覚している結果となった。
参考:【エルゼビア・ジャパン株式会社】科学研究に対するコロナ禍の影響の初グローバル調査、世間の関心は高まるも、理解は向上せず(PDF)