北陸先端科学技術大学院大学創造社会デザイン研究領域のクサリ・モハマド・ジャバッド准教授、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授、石井香織教授らの研究グループは、自宅近辺の犯罪や交通に関する安全性、交通機関へのアクセス、近隣の歩きやすさに対する認知を改善させることが、中高年のうつ症状発症リスクの低下に影響することを突き止めた。
北陸先端科学技術大学院大学によると、うつ病は全世界で約3億人が患者と推定され、予防対策が喫緊の課題となっているが、周辺の道路や都市空間がメンタルヘルスの増進に貢献できる可能性が指摘されてきた。
そこで、研究グループは東京都江東区と愛媛県松山市で住民基本台帳から40~64歳の男女約6,000人を無作為抽出し、研究参加に同意した866人に質問票形式のアンケート調査を実施、うつ病の罹患状況と周辺の道路、都市空間の現状について調べた。
その結果、自宅近辺の歩きやすさなど道路、都市空間への高い認知がうつ病発症リスクの低下と関連があった。女性は公共交通機関へのアクセスや交通の安全性に対する認知がうつ病発症リスクを低下させていたのに対し、男性は犯罪に関する認知がうつ病発症リスクの低下と関連していることが分かった。
研究グループは自宅近くの道路、都市空間がうつ症状に影響を与えることを示した可能性があることを示した結果とみており、自宅周辺の歩きやすさや公共交通機関へのアクセス、犯罪、交通に関する安全性認知の向上を図ることが中高年のうつ症状改善に重要と指摘している。