山梨大学ワイン科学研究センターの乙黒美彩准教授、岸本宗和准教授と山梨県のワイン醸造会社・丸藤葡萄酒工業の共同研究グループは、フランスなどから輸入している培養酵母を使わずに自然発酵で高品質のワインを醸造する新方法を開発した。
山梨大学によると、この方法はスケールアップ法と呼ばれるもので、ブドウに付着している天然酵母を利用する。事前に収穫したブドウで小規模の自然発酵を始め、徐々に規模を広げて最終的に酒母となる発酵液を添加率0.5~2%でブドウ果汁に加えて発酵させる。この方法で作ったワインは自然発酵ワインの特徴といえる香味の複雑さを付与することができ、高品質化を目指すオーガニックワインへの応用も期待できる。
北海道や山梨県、長野県では近年、新しいワイナリーの設立が相次いでいる。これまでのほとんどのワイナリーはフランスなどから輸入した培養酵母を使っているが、ワインの味わいが画一的になる欠点がある。
そこで、自然発酵を行うワイナリーが増えつつあるが、不完全な発酵で酸味が強くなりすぎたり、不快な香りが生成されたりする点が課題になっている。研究グループはこの課題を克服するために、5年間にわたって継続試験し、スケールアップ法で不快な香りが減少し、高い品質のワインを醸造できることを確認した。
参考:【山梨大学】日本発:ワインの自然発酵・スケールアップ法の有用性を実証~オーガニックワインへの応用に期待~(PDF)