大阪大学大学院と浜松医科大学の研究グループは、幼児期の長時間のデジタル視聴は、その後の神経発達(コミュニケーション機能・日常生活機能)に弱い影響があるが、その影響は十分な外遊びで減らせる可能性があることを明らかにした。

 テレビやDVDに加え、スマートフォンやタブレットなどを見る1日当たりの平均デジタル視聴時間を「スクリーンタイム(ST)」と呼ぶ。幼児のSTが長いと、その後の言語機能、社会機能・対人機能(社会性)、運動機能の発達への望ましくない影響や、学業成績の低下をもたらす可能性が指摘されている。ただしSTの影響を否定する研究もあり、ST問題の理解と対応に未解決の課題が残されていた。

 今回、885名の子どもを対象に、4歳の神経発達学的予後としての「コミュニケーション機能」「日常生活機能」「社会機能」の得点、2歳での「1日あたりのST」、2歳8か月での「1週当たりの外遊び日数」のデータを利用して解析した。

 その結果、2歳のSTは、4歳の「コミュニケーション機能」「日常生活機能」を低下させるが、その影響の程度は限定的であり、特に「日常生活機能」への影響は2~3歳に十分な外遊びをすることで緩和される可能性があること、また、2歳のSTは4歳の「社会機能」に明確な影響を与えていないことが分かった。

 研究グループは、今回の結果が「子どものSTを短くする必要があり、そのためには両親が『スマホ育児』をやめるべきである」という論調の見直しに十分なデータとしている。子どものスクリーンタイムをどのようにコントロールすべきかを社会全体で考え、その影響を減らす外遊びなどの介入方法の深化も求められていると指摘している。

論文情報:【JAMA Pediatrics】Outdoor play as a mitigating factor in the association between screen time foryoung children and neurodevelopmental outcomes

大阪大学

一人ひとりの「真価」を、阪大の「進化」に。地域に生き世界に伸びる大学へ

大阪大学は、11学部23学科を有する研究型総合大学。1931年の創設以来、「地域に生き世界に伸びる」をモットーに、高度な教育研究力、教職員の和の力、そして伝統の重みと大阪という地の利が織りなす卓越した「基盤」と「力」を有しています。これらの優れた潜在力を活かし[…]

浜松医科大学

良質な医療人を育成し、独創性のある研究成果を世界に発信し、地域医療を中核的に担う

浜松医科大学は、医学・看護学に関する基礎的知識・技術の習得はもちろんのこと、問題解決能力と自学自習の態度・習慣を身につけ、医療倫理を尊重して、人々の健康に貢献することを誇りとする医療人の育成をめざしています。医科大学の特性を生かした医学科と看護学科の学生が共に[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。