東北大学生命科学研究科の川津一隆助教、近藤倫生教授の研究グループは、自然のバランスが保たれる仕組みを世界に先駆けて解明した。
自然生態系では無数の生物種が互いに関わり合いながら共存している。このような生態系では特定の生物種が大発生を起こしたり、絶滅をしたりする、といった個体数の劇的な変化はあまり起こっていない。一方で、理論研究によると、生物の種類の数が多くなるほど生態系が維持されにくくなることが予測されている。この理論と実証のギャップは、まだ知られていない何らかのしくみが働いていることを示唆している。
そこで、同研究グループは、生体系における生物種の「成功(どれほど繁栄するか)」の程度によって、生物が他の種から受ける影響が変化することを組み込んだ数理モデルを構築・解析した。その結果、「一人勝ち」を防ぐ仕組みが自然のバランスを保っていることが明らかになった。つまり、ある種の個体数が増えた(=繁栄した)場合に、害をもたらす種間関係があるほうが、生態系の安定性が高くなることが分かった。本研究により、利益や害をもたらす種間関係の間で密度依存に差がある事が複雑な生態系を維持するカギとなることが示された。
本成果は、自然のバランスを保つメカニズムを理解できるだけでなく、効率的な多様性保全法の開発などの応用にも期待される。