東京医科歯科大学の戸原玄教授らの研究グループは、国立長寿医療研究センターの前田圭介医長との共同研究で、誤嚥防止に用いられているとろみ調整食品でとろみを付けた炭酸飲料中の炭酸には、嚥下改善効果があることを明らかにした。
一般的に水分にとろみを付与することにより粘度を増加させることで、嚥下障害患者の誤嚥を防ぐという方法がしばしば用いられる。一方、炭酸飲料は、その発泡性が咽頭粘膜を刺激することで嚥下運動を促進するため嚥下改善効果があるとされる。しかし、とろみ付き炭酸飲料の嚥下動態への効果を検証した研究はあるが、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸の効果を検証した研究は報告されていない。
そこで研究グループは、対象者38名に対し、とろみ付き炭酸飲料と炭酸なしとろみ付き飲料との摂取時の嚥下動態を比較した。その結果、とろみ付き炭酸飲料は、炭酸なしとろみ付き飲料と比較し、咽頭残留(喉での食物の残留量で多いと誤嚥リスクが高い)が減少した。また、嚥下反射がより早いタイミングで生じた。これにより、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸には嚥下改善効果があることが明らかになった。なお、誤嚥・喉頭侵入(食物の喉頭内への侵入)は、とろみ付き炭酸飲料と炭酸なしとろみ付き飲料で有意な差は認められなかった。
今回の研究成果により、嚥下障害患者に対するとろみ付き炭酸飲料の有効性が示唆された。得られた知見から、とろみ付き炭酸飲料は、水分で誤嚥する嚥下障害患者の嚥下訓練に有効な可能性がある。すでに臨床現場でも炭酸水を用いた嚥下訓練が行われており、今後は、とろみ付き炭酸飲料を用いた嚥下訓練の効果を検証したいとしている。
論文情報:【Scientific Reports】Effects of thickened carbonated cola in older patients with dysphagia