埼玉大学の斎藤雅一教授らの研究グループは、異なる二つの金属を組み合わせて合成した化合物の性質を調べたところ、それぞれの金属からなる化合物の性質は現れず、全く異なる物性が発現することを発見した。
1951年にフェロセン(2つのシクロペンタジエニル環の間に鉄原子が挟まれた錯体)が合成されて以降、様々な遷移金属がサンドイッチされた化合物、さらにはサンドイッチ構造を三層(トリプルデッカー)に拡張した化合物が合成されている。しかし、このようなトリプルデッカー構造に異なる二つの遷移金属原子を挟み込む手法は限られていた。
研究グループは、炭素π電子系(炭素二重結合に生じる骨格)にスズを組み込んだ独自の配位子を開発し、これを用いてトリプルデッカー型錯体の合成に成功していた。今回、この配位子を用いて二つの異なる遷移金属原子(ルテニウムとロジウム)を挟み込んだ化合物の合成に成功した。この化合物の性質を調べたところ、それぞれの金属からなる化合物の性質は現れず、全く異なる物性が発現した。
この結果は、異なる二つの金属原子を組み合わせることにより、それぞれの金属原子を含む化合物にはない性質を創りだすことを示している。つまり用いる金属原子の様々な組み合わせを研究すると、望みの性質または思いもよらない性質をもつ多種多様な化合物を創製できるということになる。
今回得られた化合物をイオン液体中でマイクロ波を用いて加熱し、スズ、ルテニウムおよびロジウムの三種類の金属から成る新しいナノ粒子の合成にも成功した。今後、生成したナノ粒子を触媒として用いた反応の発見が期待される。