筑波大学の濵野淳講師らの研究グループは、進行がん患者が自宅で過ごした場合と、緩和ケア病棟で過ごした場合の生存期間の違いを検証し、それぞれの場所で受けた治療・ケアの影響を考慮しても、予後の見込み期間によっては自宅で過ごす方がやや長くなる可能性があるが、ほとんど違いがないことを明らかにした。
がん患者の「Quality of death(死の質)」は、最期の時間を過ごす場所の影響を受ける。しかし、その場所やそこで受ける治療・ケアによる生存期間の差については不明だった。そこで、自宅で治療・ケアを受けた進行がん患者(自宅群)と、緩和ケア病棟で治療・ケアを受けた進行がん患者(緩和ケア病棟群)の生存期間の違いを、体調や症状、受けた治療・ケアを考慮して検証した。
解析対象は進行がん患者2878名。予後が月の単位・週の単位・日の単位と見込まれる3群に分けて、自宅群と緩和ケア病棟群について客観的な予後予測指標のPiPS-Aによって生存日数を比較した。
その結果、予後が月の単位と見込まれる群では平均生存期間が自宅群65日間、緩和ケア病棟群32日間、予後が週の単位と見込まれる群ではそれぞれ32日間、22日間でいずれも自宅群の方が長かった。しかし、予後が日の単位で見込まれる群では、それぞれ10日間、9日間で有意な差はなかった。
研究では、亡くなるまでの症状や、受けた治療・ケアが、時間とともにどのように変化して生存期間に影響したかを考慮していないため、「自宅の方が長生きする」とは結論できない。しかし、自宅で最期の時間を過ごすことが生存期間を縮めると心配する臨床医や患者、家族に対して、「その可能性は低い」という説明に活用できるとしている。