ジストニアは、身体の様々な筋に不随意な筋緊張異常を生じ、異常姿勢や動作の困難を引き起こす難治性の症候群である。治療の第一選択は、ボツリヌス治療である。しかし、ボツリヌス治療でも効果が見られず、症状が長期化したり日常生活や仕事に困難を来したりする難治症例も多く存在する。
関西医療大学では、大学院保健医療学研究科 研究科長の鈴木 俊明教授の指導により、ジストニアに対する鍼治療効果の検討と、より効果的な鍼治療方法の確立について、長期に渡って研究してきた。現在までに確立してきた鍼治療の特徴は、症例ごとに動作分析をおこなって異常姿勢や不随意運動を生じる問題となる罹患筋を同定することと、鍼治療部位として経絡と経穴(ツボ)の理論を用いて罹患筋から離れたところにある経穴を対象とすることである。また、異常姿勢の問題点として、筋緊張異常のみでなく筋短縮や皮膚短縮にも着目して鍼治療をおこなって、効果を得ている。動作分析については、理学療法士である鈴木教授が指導し、同研究科の谷 万喜子教授をはじめとする鍼灸師が鍼治療をおこなっている。
2023年4月、この研究成果に基づいたジストニアに対する鍼治療について、谷教授と鈴木教授が解説した論文“Acupuncture Treatment for Dystonia”が、書籍 “Acupuncture and Moxibustion – Recent Advances, New Perspectives, and Applications” に掲載された。本論文では、表面筋電図を用いたジストニアの病態把握や、遠隔部経穴への鍼治療による筋緊張への効果などについて解説している。ジストニアに対して鍼治療で効果が得られることに、国内外から大きな期待が寄せられている。