宮崎大学の研究チームは、幼若期の抗生剤投与がアレルギー発症リスクを高める仕組みを明らかにすることに成功した。
生体には、体内に侵入した異物を排除する免疫機構が備わっているが、同時に、不利益な免疫応答を阻止する免疫寛容とよばれる機構も備わっている。例えば、消化管では、摂取した食物に対する免疫反応を阻止する消化管粘膜免疫寛容が成立している。しかし、消化管粘膜免疫寛容が破綻した場合、食物アレルギー発症に繋がると考えられている。
一方、抗生剤の服用は消化管細菌叢異常を引き起こすことが分かっており、また、2歳までに抗生剤を使用した幼児は、5歳でアレルギー疾患を発症しているリスクが有意に高いことが報告されている。以上から、本研究は、幼若期の抗生剤服用で誘発された消化管細菌叢異常が、消化管粘膜免疫寛容を破綻させアレルギー発症リスクを高める可能性について検討した。
まず、粘膜組織に存在する白血球の一種である樹状細胞を欠損させたマウスでは、消化管粘膜免疫寛容が成立せず、消化管粘膜免疫寛容の成立に粘膜組織樹状細胞が必須であることを見出した。
次に、幼若期での抗生剤服用が及ぼす影響を調べたところ、消化管常在細菌の減少を示す消化管細菌叢異常が認められ、さらに、腸間膜リンパ節において、粘膜組織樹状細胞の腫瘍壊死因子様リガンド1A(TL1A)の産生が低下することが認められた。TL1Aは、3型自然リンパ球によるコロニー刺激因子2の産生を増強することで、腸間膜リンパ節粘膜組織樹状細胞の免疫抑制機能を亢進するはたらきがある。すなわち、幼若期での抗生剤服用は、TL1A産生低下を介して腸間膜リンパ節粘膜組織樹状細胞の免疫抑制機能を喪失させ、結果として消化管粘膜免疫寛容の破綻を導くことが明らかとなった。
消化管粘膜免疫寛容の破綻が生じる機序を明らかにした本成果は、アレルギーに対する新たな治療法の開発にもつながる可能性が期待される。