大学卒業後、本人の年収が300万円以下なら返還猶予となる「所得連動返還型無利子奨学金制度」で、文部科学省は2017年度の進学者からマイナンバー制度を採り入れる新方針を打ち出し、有識者会議で検討に入りました。有識者会議は新制度の論点整理や骨子取りまとめをして2016年3月に結論を出すことにしています。

文科省によると、所得連動返還型無利子奨学金制度は、奨学金返還に対する不安や負担を軽くして進学する仕組みとして2012年度から導入された制度で、両親ら家計を支える人の年収が300万円以下の学生を対象としています。学生が卒業したあと、年収が300万円以下なら返還が猶予される利点があります。
しかし、債権が消滅することがないので、返還期間が長期化するうえ、年収が300万円を超えるとすぐに通常の返還が始まるため、急に負担が重くなるという欠点も持っています。さらに、貸し倒れによる国費の負担増が問題になっているほか、返還猶予と認定されるためには毎年、日本学生支援機構に所得証明書を送付しなければならないなど受給者の負担も大きくなっています。
このため、文科省はマイナンバー制度の導入で本人の所得が把握できるようになるのを受け、制度を見直す方針。一定の年収を上回った段階で返還を始め、年収に応じて毎月の返還額も変えるとしています。有識者会議では今後、所得に応じた返還額の設定を進めます。

海外では、英国やオーストラリアでこうした制度が既に導入されています。英国は年収が2万1,000ポンド(約380万円)を超す金額の9%を、税務署を通じて徴収しています。オーストラリアは課税所得に応じて決められた額を税務署が集める仕組みです。ともに、貸与総額に達するまで税務署を通じた徴収が続きます。

大学ジャーナルオンライン編集部

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