実践女子大学の作田由衣子専任講師らの研究グループは、中央大学、日本女子大学との共同研究で、赤ちゃんでも顔からその人が信頼できそうかどうかという印象を知覚している可能性があることを発見した。
人は顔を見ると「いい人そう」「強そう」など、自動的にさまざまな印象を知覚する。社会で生きる上で、他者が自分にとって味方となりそうかどうかを評価する能力は非常に重要だが、これまでその発達過程についてはほとんど解明されていなかった。もし印象知覚が多くの社会的経験を必要としないなら、1歳未満の乳児でも印象を知覚することができると考えられる。
今回の実験では、6~8か月の乳児44名が参加、画像はCGの顔画像(プリンストン大学アレクサンダー・トドロフ教授作成)を使用した。社会的認知の主要な2つの印象である「信頼感」(いい人そう)と「支配性」(強そう)の組み合わせで4つの顔を選び、信頼感が高い顔と低い顔のペアを2つ(支配性が高い顔同士/低い顔同士)作った。
実験では、信頼感の高い顔と低い顔を並べて提示し、乳児がどちらに注目するか、注視時間を測定した。その結果、支配性が高い顔同士のペアでは信頼感の高い顔をより注視した。次に、同じ条件で、顔の向きを上下逆さにすると、どちらか一方の顔への注視の偏りは見られなかった。
人を見る目は対人的な経験から養われると思われがちだが、今回の研究から、実際は顔の物理的情報から直接印象を知覚していると考えられる。つまり、人は必ずしも見た目で内面を正確に判断しているわけではない。見た目の印象が、就職や入試などの面接、選挙の投票などでの選択判断に影響することも研究から分かってきているが、そうした見た目での判断が間違いを引き起こしてしまう可能性がある。
論文情報:【PLOS ONE】Infants prefer a trustworthy person: An early sign of social cognition in infants