横浜国立大学と産業技術総合研究所の小林拓実研究員らの研究グループは共同で、長期運転できるイッテルビウム光格子時計を開発した。将来の国際原子時の精度向上への貢献が期待される。

 時間の単位である「秒」は、現在セシウム原子のある準位間の遷移に共鳴するマイクロ波の周波数を用いて定義されているが、近年、さらに高精度な光格子時計(光を用いる原子時計)が注目されている。また、最近のメートル条約関連会議で、秒の再定義に向けた要求精度などの条件の1つとして、光時計による国際原子時の精度向上が挙げられた。現在、長期運転可能な光時計としてストロンチウム光格子時計の研究が先行しているが、高精度化に利点の多いイッテルビウム光格子時計の開発も世界中で行われている。

 光格子時計は多数のレーザー光源を用いる複雑な装置であるため、時計の動作には、全てのレーザー周波数を精密に制御する必要がある。今回研究グループは、全てのレーザー光源を「光周波数コム」(超短光パルスレーザーから出力される、広帯域で櫛状(comb、コム)のスペクトルを持つ光)で制御する新しいシステムを構築し、イッテルビウム光格子時計の安定した動作を実現した。

 開発したイッテルビウム光格子時計を数カ月の実験期間内に定期的に運転したところ、積算運転時間は60時間以上となり、将来、国際原子時の精度向上に貢献できる能力があることが示された。また、誤差評価を行ったところ、周波数の相対的な誤差は9000万年に1秒程度であることが確かめられた。

 今後は、イッテルビウム光格子時計の安定性と信頼性をさらに向上させ、標準器としての完成度を高め、国際原子時への貢献を目指すとしている。

論文情報:【IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control】Uncertainty evaluation of an 171Yb optical lattice clock at NMIJ.

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