地球の周回軌道上には、人類が宇宙開発を開始してから50年以上にわたって宇宙空間に放出してきた宇宙機や部品が、多数の宇宙ゴミ(スペースデブリ)となって周回している。スペースデブリは年々増え続けている上、7km/sを超える高速で運動しているため、人工衛星や宇宙ステーションに衝突すれば甚大な被害をもたらす危険性がある。そのため、デブリを除去するための様々な手法の提案・開発が進められてきた。
例えば、プラズマ流をデブリへ照射し減速させることで周回高度を下げ、大気圏に突入させればデブリを燃焼除去できると期待されている。一方、プラズマ流を噴射した推進機はデブリと逆方向に加速されるため、逆方向にもプラズマを噴射し、衛星に働く力をキャンセルしなければならない。これにはエンジンが2台必要で、それも数kW級の大電力推進機を搭載しなければならないことから、従来提案されてきたイオンエンジンを用いた手法では、耐久性などの改善が必要だった。
このような中、東北大学とオーストラリア国立大学の研究グループは、長寿命・大電力プラズマ推進機として期待される無電極プラズマ推進機(ヘリコンプラズマスラスタ)の開発に取り組み、これを用いてデブリ除去動作が1台の推進機で可能であることを実証した。
室内実験において、双方向プラズマ放出を実現・制御することで、推進機に働く推力がゼロの状態を維持しながら、デブリを模した物体の減速が可能であったという。また、外部磁場配位や燃料導入法によって推進機の加速・減速も実現され、デブリ除去衛星に必要な全ての動作を1台の推進機で実現可能なことが示された。
今後、実用化に向けてさらなる開発が進むことが期待される。