立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授らの研究チームは、ポーラ化成工業株式会社と共同し、有酸素性運動と筋力トレーニングの皮膚に対する効果を調べた。その結果、どちらも皮膚老化を改善させることが明らかとなった。運動は、脳や筋肉の老化に対してアンチエイジング効果を示すことがわかっているが、皮膚に対してどのような効果を有するかは世界的にも先行研究がなく、メカニズムが明らかとなっていなかった。
本研究では、40~50代の女性61名を対象とした4か月間の運動介入により、肌の変化を解析した。有酸素性運動を行う群と筋力トレーニングを行う群で、それぞれ週2回の運動を行い、試験の前後で皮膚計測、採血、体組成測定、運動パフォーマンスの評価などを実施した。
結果、有酸素性運動と筋力トレーニングは、どちらも皮膚老化の指標である皮膚弾力性と真皮構造を改善させることが明らかとなった。特に、筋力トレーニングは、加齢により薄くなっていく真皮の厚みまで増加させることが明らかとなり、見た目の若々しさに貢献する可能性があることを世界で初めて報告した。
この機序として、運動による血中成分の変化が、皮膚の重要な層である真皮の細胞外基質(ECM;Extracellular Matrix。コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどを指す)を増加させることを見出した。また、筋力トレーニングでは、血中の炎症性ケモカイン(CCL28とCXCL4)が減ることで、真皮のECMの一種バイグリカンが増加することを突き止め、これが真皮の厚みの改善につながるとした。
本研究成果は、運動による皮膚老化改善メカニズムを解明したことで、運動が健康だけでなく美肌にとっても良い作用を持つことを科学的に示したといえる。運動を始めるきっかけや、運動を継続するモチベーションとして役立つことが期待される。