自己表現には3つのスタイルがあり、自己を後回しにして他者を優先する「非主張的」、他者を考慮せず自己を押し付ける「攻撃的」、そのどちらでもなく自己と他者の両方を尊重して相互理解を深めようとする「アサーティブ」がある。「アサーティブネス」は、他者を尊重しつつも率直に自己表現ができるコミュニケーションスキルの一つとして知られ、例えば治療の安全性に懸念のある場合に医療専門職間で助言する際に役立つなど、医療安全の面でも有用と考えられている。

 今回、筑波大学の研究で、薬局薬剤師のアサーティブネスが、薬剤師から医師への連絡による処方変更と関連があることが見出された。調剤薬局に勤務する薬局薬剤師は、医師が発行する処方せんに基づいて患者に薬剤を提供するが、患者への聞き取りや記録、検査情報をもとに処方の安全性に懸念を持った場合は医師に連絡を行う。この際、薬剤師のアサーティブネスが医師への発言の助けになることが予想される。

 実際に、薬局薬剤師963名から回答を得たWebアンケート結果から、アサーティブネス(Interprofessional Assertiveness Scaleで評価)と、過去1か月間に医師への連絡による処方変更があった頻度との関連を調べた結果、アサーティブな自己表現の得点が高い薬剤師ほど、医師が処方変更に至る連絡を多く行っていたことが分かった。

 医師が処方を決める際には、信頼する薬剤師とのコミュニケーションに影響を受けるとされている。今回の調査結果から、医師と相互理解を深めようとする薬剤師のアサーティブな自己表現が、医師からの信頼を得ることにつながり、医師の処方変更を促す可能性が示唆された。

 アサーティブネスは、教育によって向上しうるコミュニケーションスキルである。今後、薬剤師に対するアサーティブネス教育により、処方の安全性に懸念のある場合に医師への必要な連絡実施を促進できれば、薬物治療の安全性向上に寄与することが期待される。

論文情報:【Research in Social and Administrative Pharmacy】Relationship between assertiveness in community pharmacists and pharmacist-initiated prescription changes

筑波大学

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