筑波大学の田宮菜奈子教授らの研究グループは、国民生活基礎調査のデータを二次的に解析し、乳がん検診未受診と関連する特徴(年齢や特定検診未受診など)を明らかにした。さらに、未受診を予測する簡易リスクスコアを開発した。
国内では、がん検診受診率が低く、乳がんも例外ではない。国は2016年度までにがん検診受診率を50%以上にする目標を掲げていたが、乳がんは2019年でも目標が達成されていない。乳がん検診の受診率向上には、どのような人々が検診を受けないのかを明らかにすることが重要だ。
研究グループは、2016年と2019年の国民生活基礎調査(世帯票と健康票)のデータを二次的に解析し、乳がん検診の未受診と関連する特徴を明らかにした。また、これらのデータから、乳がん検診の未受診を予測する簡易リスクスコアを開発した。
分析の結果、50歳以上、低い教育状況、低い世帯支出、(加入している健康保険のタイプとして)国民健康保険、小中規模企業の被雇用や非正規雇用、特定健診の未受診、医療機関の定期的な通院がないことなどが、乳がん検診の未受診と関連していた。
また、これらの関連項目の中で、影響力が大きく客観的に把握できる年齢(55~64 歳が1点、65~74歳が3点)、健康保険のタイプ(国民健康保険加入者の場合1点)、過去1年以内の特定健診が未受診であること(8点)の三つの変数で構成されるリスクスコアが、乳がん検診未受診者をよく予測できることが分かった。
今回の研究の結果が、乳がん検診を受診しない可能性が高い女性を把握し、受診への働きかけに役立つことが期待されるとしている。