東北大学の研究グループは、多くの歯を失った人でも、入れ歯などの補綴装置を使用していることにより、タンパク質の摂取状態を維持または改善できることを明らかにした。
高齢者におけるタンパク質の低摂取は筋肉量の低下につながり、フレイルやサルコペニアのリスクを高める。歯を多く失っている人では、タンパク質の摂取量が減ることが分かっているが、入れ歯などの補綴装置の使用の有無でタンパク質の摂取量に差があるかは不明だった。
そこで研究グループは、74歳以上の高齢者約2千人を対象とした横断調査(2019年)を分析。歯の本数(20本以上/10~19本/0~9本)および補綴装置(入れ歯・ブリッジ・インプラントなど)の使用と、質問票により推定した総摂取カロリー当たりのタンパク質(総タンパク質・動物性タンパク質・植物性タンパク質)の占める割合との関連を評価した。
その結果、0~9本の人で補綴装置を使っていない人では、1日の摂取エネルギーあたりのタンパク質の摂取量が2.3%低いことが示された。しかし、0~9本の人でも補綴装置を使っている人では、タンパク質の摂取量低下が0.5%と、8割ほど小さくなることも明らかになった。
歯の喪失は、特に高齢者では様々な疾患・障害の発生につながり得る。入れ歯やブリッジ・インプラントなどを用いた適切な歯科補綴治療を受けることによって、栄養状態の改善および低栄養状態に起因する様々な健康問題を未然に防げる可能性があるとしている。