東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史教授らのグループは、成長期における咀嚼が高次脳機能の発達に重要である可能性をマウスモデルで示した。同氏は本成果により、2018 IADR/AADR William J. Gies Awards を受賞した。これは、歯科医学領域全てをカバーする国際誌「Journal of Dental Research」に掲載された1年間の最優秀論文に与えられる栄誉ある賞だ。

 成長期に咀嚼回数が低下すると、顎の骨や噛むための筋肉だけでなく脳の発達にも悪影響を及ぼすことが知られている。また、加齢に伴い歯を失うことによって咀嚼機能が低下すると、認知症のリスクが高まることも分かってきている。

 同研究グループは、咀嚼機能と脳機能がどのように関係しているか、離乳期から成長期にかけて粉末飼料を与えて咀嚼機能を低下させたマウスをモデルとして検討を行った。その結果、粉末飼料を与えたマウスでは、通常の固形飼料を与えたマウスと比べ、顎顔面の骨や噛むための筋肉の成長が抑制され、記憶・学習機能も顕著に障害されることが分かった。さらに、記憶・学習を司る脳領域である海馬を解析したところ、神経活動やシナプス形成、脳由来神経栄養因子の発現が低下し、神経細胞が減少していることが明らかになった。

 本成果により、成長期に咀嚼刺激が低下すると、顎骨や咀嚼筋の成長と記憶・学習機能が障害される可能性が見出された。今後、認知症や記憶・学習機能障害の新たな治療法や予防法の確立につながることが期待される。

参考:【東京医科歯科大学】大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史教授がWilliam J. Gies Awardsを受賞しました(PDF)

論文情報:【Journal of Dental Research】Reduced Mastication Impairs Memory Function

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