大阪大学大学院の齋藤彰准教授らの研究グループは、モルフォ蝶をヒントにナノ構造を工夫することで「明るく広角で、色が偏らず、防汚機能もある」光拡散シートを世界で初めて実作した。
これまで光拡散材は、微小な散乱体を埋め込んで光を拡散するか、表面の微小凹凸による屈折で光を曲げていた。しかし散乱体では「明るさ」と「角度広がり」が両立せず、屈折では「角度広がり」の不足、汚れ易い、等の欠点があり、全てを満たすものはなかった。
モルフォ蝶は、南米に産し、生きた宝石とも呼ばれる青く輝く蝶。研究では、モルフォ蝶の翅(はね)が「明るく広角で色が偏らない反射をもち、撥水性もある」ことを応用。電磁場シミュレーションにより実作可能な構造を設計し、半導体技術で実作した。
このシートは、透過率が高く(約90%)、表面ナノの凹凸がハスの葉がもつ撥水性(ロータス効果)と同じ効果を持つため防汚機能がある。角度広がりは垂直方向から±40°で十分あり、色分散もない。さらに設計次第で、拡散光の形状異方性の制御も可能となる。
今回、研究グループは、モルフォ蝶の特異な反射特性を透過に転用することで、「明るく広角で、色が偏らず、防汚機能もある」全条件を満たす構造を発案し、実作により機能を確認した。これにより、省エネに役立つ採光窓や、各種照明に役立つ光拡散シートなどへの応用が期待されるとしている。