大阪大学の谷口一徹准教授らの研究グループとダイキン工業は、AI(人工知能)による空調の自動運転技術を開発し、実証実験にて快適室温を維持しながら30%以上の省エネを達成した。
カーボンニュートラルの実現に向けて、エネルギー消費量の削減が求められる中、空調は建物の消費エネルギーの約4割を占めることが知られる。特に暖房では、近年の建物の断熱性能向上、室内のパソコンや照明などの発熱により、暖房を停止しても快適室温が維持される場合があるが、暖房を停止できるかの見極めが非常に難しいため多くの無駄がある。この問題を解決できる、最適な機器運転により快適性と省エネを両立する空調のエネルギーマネジメントが注目されている。
谷口准教授らが開発した自動運転技術は、部屋の暖まりやすさや冷めやすさをAIで学習し、室温のデータや空調機の運転データ、気象情報のデータから15分おきに最適な空調の設定温度を求めるという。そして暖房が不要な場合は積極的に運転を停止することで、快適性を維持しつつ大幅な省エネを実現する。
大阪大学キャンパスでの実証実験では、冬の暖房運転において朝7時から夜6時まで室温を25度に維持するように手動で空調を操作した場合と比べ、自動運転では積算消費電力量を6kWh(約33%)削減したとしている。同様の実験を2022年12月~翌年3月にかけてさまざまな条件で行い、平均3割程度の省エネ効果を確認した。
本技術は、安価な計算機で既設の空調機のリモコンを遠隔操作するため、既存のビルにも比較的容易に実装可能だという。将来的にオフィスビルに普及すれば大幅な省エネが期待でき、昨今の電気代高騰を受けた節電に加え、カーボンニュートラルの実現に向けた大きな貢献が期待されるとしている。