2023年10月18日、奈良県が高校授業料の無償化に向けた案として最大63万円の授業料を、2024年度より支援すると発表した。8月25日には大阪府が最大63万円の授業料を支援すると発表しており、支援金額は同額で追随するかたちとなった。

 奈良県の最大支援額は大阪府と同額の63万円であるが、異なる点が大きく3つある。1つ目は、63万円を超えた分を誰が負担するかという点。奈良県は保護者負担だが、大阪府は高校負担。2つ目は、府内県内の在住者全員対象かどうかという点。奈良県は、県内在住で県内の私立高校に通う1~3年生が対象で県外の高校に通う場合は対象外となるが、大阪府は全員対象。3つ目は、所得制限の有無。奈良県は世帯収入910万円未満対象で、大阪府は所得制限がない。しかし奈良県は、世帯年収が910万円以上であっても23歳未満の子どもを3人以上扶養している場合は、生徒1人あたり年間5万9400円を上限に県が独自で支援する。なお、大阪府は移行期間があり、全学年で完全授業料無償となるのは2026年度からとなる。

 私立高校の場合、保護者の負担は授業料に加えて教育充実費や施設設備費などの費用も大きな割合を占める。2022年12月23日に文部科学省が発表した私立高校(全日制)の入学時の初年度生徒等納付金の内訳を見ると、授業料と入学料や施設設備費等の考え方が地域により大きく異なっていることがわかる。2022年度の平均授業料は、奈良県で55万857円、大阪府は59万4431円と他県よりも高くなっているが、施設設備費はかなり低くなっている。高校授業料無償化の流れについて、US進学総合研究所は、これだけ都道府県により平均授業料と施設設備費等のバランスが異なると、大阪府や奈良県の授業料のみ支援という方法も難しい問題と指摘している。
 
参考:【奈良県】私立高等学校へ通う方への補助について
【文部科学省】私立高等学校(全日制)の初年度授業料等について(平成30年度~令和4年度)(PDF)
【US進学総合研究所】高等学校の授業料無償化について考えてみる~大阪府&奈良県の例~

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。