麻布大学、独立行政法人地域医療機能推進機構 相模野病院、太田油脂株式会社の研究により、妊娠中にα-リノレン酸を摂取することで産後のメンタルヘルスを安定させる効果がある可能性が明らかとなった。

 世界的な調査で、妊婦の10~20%は産後うつを経験しているとの報告があり、日本も例外ではない。他方、母親は胎児の脳の成長のために、十分量のオメガ3系脂肪酸を供給する必要があるが、オメガ3系脂肪酸は体内で合成されないため、食物から摂取する必要がある。オメガ3系脂肪酸には、エゴマ油やアマニ油に多く含まれるα-リノレン酸(ALA)、魚介類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがある。これらの母親の摂取量が少なければ、新生児の成長・発達だけでなく、母親自身の脳機能にも影響を与え、メンタルヘルスが不安定になる恐れがある。

 今回の研究では、出産と育児の経験のない初産婦を対象に、妊娠中にオメガ3系脂肪酸を多く含むエゴマ油や魚油を12週間摂取してもらい、産後1ヶ月時に母親の産後うつ状態に関するメンタルヘルススコアを調査することで、オメガ3系脂肪酸摂取と産後のメンタルヘルスの関係性の解明を試みた。

 その結果、α-リノレン酸を多く含むエゴマ油を摂取した群で、産後のメンタルヘルススコアが一般的なスコア(既存試験において得られたデータ)よりも良好な値を示すことがわかった。また、別の症例対照研究でも、母親の赤血球α-リノレン酸が低いと産後のメンタルヘルスが不安定となる関係を発見し、妊娠中のα-リノレン酸の摂取が産後うつを予防する可能性を見出した。

 これまで、日本人は魚食民族としてEPAやDHAの摂取量が世界の中でも多いと考えられてきたが、今回の研究では、近年の世界的なオメガ3系脂肪酸摂取不足の例に漏れず、日本の妊婦のオメガ3系脂肪酸の摂取状況も欧米並みに低いことが確認されたという。胎児への供給という点だけでなく、母親自身のメンタルヘルスの安定のためにも、オメガ3系脂肪酸の摂取を意識する必要があるとしている。

論文情報:【Nutrients】Effects of Varied Omega-3 Fatty Acid Supplementation on Postpartum Mental Health and the Association between Prenatal Erythrocyte Omega-3 Fatty Acid Levels and Postpartum Mental Health

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