青山学院大学の春山純志准教授(研究当時:東京大学物性研究所)と勝本信吾教授、カリフォルニア大学のRuqian Wu教授らの研究グループは、グラフェンをトポロジカル絶縁体に変化させることに成功した。
グラフェンは炭素のみで構成される原子一個の薄さしかないシート状の物質で、極めて丈夫かつ電気伝導性が良く、外部から加えた電圧で制御できるため、次世代電子デバイス材料として注目されている。一方、トポロジカル絶縁体は界面にだけ金属的な状態が現れる物質で、スピントロニクスへの応用が期待されている。
グラフェンは理論的に初めてトポロジカル絶縁体が予言されたモデル物質だが、現実には構成原子が軽いため、トポロジカル絶縁体に必要な強いスピン軌道相互作用を持たない。そこで本研究では、ビスマスとテルルという重い原子で構成された超微粒子をグラフェンの上に微量に分布させることで、スピン軌道相互作用の導入を試みた。微量な微粒子なのでグラフェン由来のバンド構造は残しているが、炭素格子と微粒子の間に量子トンネル効果を通してスピン軌道相互作用が導入され、外部から加える電圧を制御することで、トポロジカル絶縁体状態が発現するという。
これを、電気伝導測定、状態密度測定、さらに第一原理計算により検証した結果、グラフェン内でトポロジカル絶縁体状態が生じていることが初めて確認された。
本成果は、電子デバイスにも有用なグラフェンにトポロジカルな性質を付与できたことから、今後、スピントロニクスやバレートロニクスを含め、応用の可能性が大きく広がると期待されている。