医師不足解消のために大学卒業後の一定期間、地域医療に従事することを義務づける医学部の地域枠で、臨時の増員が認められた66大学のうち、半数の33大学で2018年度の地域枠定員が満たされなかったことが、厚生労働省と文部科学省の全国調査で分かった。欠員の多くが一般学生の入学枠に流用されたとみられる。
調査は両省が9月から10月にかけ、全国の都道府県を対象に奨学金を貸与する地域枠の医学部生と卒業後の勤務状況について聞き取った。
それによると、地域枠は医師不足に苦しむ地方自治体が奨学金を出し、返済を免除する代わりに卒業後の数年間、指定した地域で医療に従事してもらう制度で、2018年度の定員は全国で合計1,014人に上る。
しかし、自治体が貸与する奨学金を全体の18%に当たる187人が受け取っていなかった。厚労省は奨学金を受け取っていない学生を地域枠の学生と見なしていない。このうち、東北大学など22大学は2割を超す定員割れを起こしている。厚労省は地域枠の定員を一般枠で埋める不適切な運用をしていたとみている。
定員割れの数は東北大学、信州大学、千葉大学が各16人、近畿大学が15人、筑波大学が13人、山形大学、長崎大学が各12人、北里大学が9人、帝京大学が7人、川崎医科大学が6人など。厚労省は2020年度入試から各大学に運用の是正を求める。