東京工業大学の熊谷啓特任助教らの研究チームは、二酸化炭素(CO2)を捕集する機能を持つレニウム(Re)の錯体が、低濃度のCO2を還元できる電気化学触媒として機能することを発見した。これにより、火力発電所や製鉄所から排出される低濃度のCO2を含んだ排ガスを、効率的に直接資源化できる可能性が出てきた。
化石資源を燃焼させる際に排出されるCO2を、電気エネルギーで還元する反応は、排出CO2削減と資源の創出の両観点から国内外で精力的に研究されているが、ほとんどは純粋なCO2を用いたものだ。しかし、火力発電所や製鉄所、セメント製造工場などから出る排ガスにはCO2が数%から十数%しか含まれていないため、従来技術では大量のエネルギーによるCO2の濃縮過程が必要だった。そこで、実際に排出される希薄な濃度のCO2を含んだガスをそのまま利用して効率よくCO2だけを還元できる方法が求められていた。
研究チームは、CO2を捕集する性質を持つレニウム錯体が、低濃度のCO2を還元する電気化学触媒として機能することを見出した。この錯体は、CO2を低濃度しか含んでいないガスから高い効率でCO2だけを捕集する機能がある。捕集されたCO2は、炭酸エステルとして錯体に固定化される。このCO2を捕集したレニウム錯体を電気化学触媒とすることで、低濃度CO2でもそのまま還元できることがわかった。
今回の発見は製造工程での省エネ化をもたらし、地球温暖化抑制にも貢献する。今後は、この新触媒のCO2捕集能をさらに向上させ、ありふれた金属である卑金属錯体の利用も視野に入れて、実用的な技術開発を目指すとしている。
論文情報:【Chemical Science】Electrocatalytic reduction of low concentration CO2