岡山大学、東京大学、北里大学の共同研究グループは、メダカ野生集団の網羅的ゲノム配列情報を用いて、日本列島内のメダカの拡散ルートを明らかにした。
日本列島に住むメダカは、大きく南日本メダカと北日本メダカの2つに分けられると考えられてきた。しかしながら、2つのグループの遺伝的関係や、各々がどのように生息域を広げてきたかについては、ほとんど調べられていなかった。また、京都・兵庫の北部である但馬・丹後地方には、それら 2 つのグループが交雑によって成立したハイブリッド集団がいるとされていたが、その形成史についてはほとんど不明であった。
今回、同研究グループは、東京大学で35年以上維持されている全国の野生メダカ系統維持群と佐賀県で採取した野生メダカ集団の染色体ゲノムを網羅的に調べ、メダカの集団構造を推定した。その結果、これまで南日本グループと呼ばれてきたメダカのグループは、北部九州を“故郷”とし、南は沖縄、北は岩手まで広がったことが示された。さらに、南と北のハイブリッド(混血)が住む地域と考えられてきた但馬・丹後地方は、実は、北日本メダカの“故郷”である可能性が高いことが統計学的に示された。故郷がこれまで不明であった北日本グループのメダカは、今回の解析により、但馬・丹後地方を起源とし、青森まで広がったことが結論付けられた。
今後メダカの進化史が、ヒト集団の進化史を解くヒントを与えてくれるかもしれない。