江戸川大学社会学部現代社会学科4年の遠山海斗さんが、民俗学・歴史学・考古学の論文コンテスト「第22回櫻井徳太郎賞」一般の部で奨励賞を受賞した。
櫻井徳太郎賞は東京都板橋区が民俗学者、櫻井徳太郎氏の功績を称えて2002年度に創設した。民俗学・歴史学・考古学を通じ、地域を基盤にした学問の発展・発達と、地域を生かす立場から研究を進める人材の育成を図るとともに、次代を担う青少年の地域研究の奨励と、郷土愛を育むことを目的に小中学生から一般まで論文や作文を募集、表彰している。一般の部の受賞は1編のみに限られ、「該当なし」となる年もある。
奨励賞を受賞した遠山さんの論文題目は「グラフィティの境界性――おっさんシールの芸術的表現と公共空間における社会的価値の対立」。2年生向け必修科目『現代社会演習・実習』におけるフィールドワーク実習のなかで、この研究テーマを見出した。
論文では、千葉県木更津市の街頭に多数貼られている正体不明のステッカー「おっさんシール」を対象に、このグラフィティ(都市に描かれた落書きの総称)がどのような目的で生み出され、また地域社会においてどのような影響を与えているのかを、フィールドワークに基づき探求した。
2021年10月から2023年11月ののべ69回にわたる路上観察調査、およびグラフィティ・ライターへのインタビュー調査、そして他のグラフィティ作品との比較から、おっさんシールには「誰が描いているかわからない面白さ」があり、それが芸術と違法の間でゆれる多様な評価と解釈を可能にしていることを明らかにした。
遠山さんは「このコンテストは、指導教員である川瀬由高先生にお声がけいただいたことを契機に、私の目標となっておりました。受賞の通知をいただいた際、指導していただいた川瀬先生をはじめ、共に議論を深めたゼミ生や、調査にご協力いただいた皆様があってこその受賞だと深く感じました。本研究を支えてくださった方々に心から感謝申し上げます」と受賞の喜びを語った。
指導教員の川瀬講師は「2年以上かけて調査データを積み重ねたことが、この論文を独創的かつ迫力あるものとしています。現代世界では、『役に立つ技術や知識』が一瞬で移り変わり、既存の枠組みでは解決不能な事柄も増えつつあります。だからこそ、自ら現場に立ち、現場から問題を捉え直していくフィールドワークという手法は、これからの社会を生き抜くための確かな支えとなってくれるはずです」と遠山さんの受賞を称えた。
参考:【江戸川大学】現代社会学科4年の遠山海斗さんが民俗学・歴史学・考古学の論文コンテスト「櫻井徳太郎賞」一般の部で奨励賞を受賞