神戸大学大学院経済学研究科の小林照義准教授らの研究グループは、時間とともに変化するネットワークの中で安定した親密さの度合いを客観的に識別する新手法を開発した。人間同士だけでなく、銀行と企業の取引関係や動物の社会性などあらゆる二者関係の親密さを測ることができる。
神戸大学によると、研究グループは調査対象となるペアが潜在的に持つ活動量をデータから推計し、無作為に相手を選んだ場合の接触回数をはじき出した。そのうえで、各ペアが現実に接触した回数を調べ、その回数が無作為に相手を選んだときに起こりえないほど多ければ、関係が親密と判断した。
これを時間とともに変化するさまざまな動的ネットワークに適用したところ、フランスの小学校では同じクラス内で親密なペアが多数発見できたほか、2008~2009年のリーマンショック時に日本の銀行間で借り入れ目的とみられる一時的な取引の増加が見つかった。このような親密なペアの集合と社会的なコミュニティ構造の対応関係は、既存の手法で検出できなかった。
研究グループはこの手法を用いることで、学校内の友人ネットワークを客観的に把握し、孤立している子どもへの対策を講じられるほか、金融市場の取引関係や家畜の群れの管理など二者関係で形成されるネットワークの構造分析など幅広い分野で活用できるとしている。
論文情報:【Nature Communications】The structured backbone of temporal social ties