大阪公立大学大学院の沢田明也病院講師らの研究グループは、指定難病「好酸球性食道炎」の日本での罹患率を、1500万人以上の大規模レセプトデータから調査した結果、欧米同様に増加していることを明らかにした。
好酸球性食道炎(EoE)は指定難病の一つで、食道の粘膜上皮に好酸球という白血球が増加する中年男性に多い慢性アレルギー性疾患だ。つかえ感や胸やけが典型的な症状で、食道に縦走溝や白斑などの特徴的な内視鏡所見がみられる。食物や空気中に含まれる花粉などのアレルゲンが原因と考えられている。欧米では約30年前から罹患者数が急激に増加しているが、日本を含めたアジアでは詳しい調査が行われておらず、その動向は不明だった。
そこで研究グループは、2005年から2022年の18年間に収集した1520万0895人の大規模レセプトデータを用いて、日本におけるEoEの罹患率(一定期間内の疾病者の新規発生を示す指標)を初めて調査した。
解析の結果、EoE患者は過去20年間で急激に増加しており、2022年には罹患率が10万人年あたり2.82人、有病率(ある一時点での疾病者の割合)が10万人あたり10.68人だった。また、喘息などのアレルギー疾患に加えて、喫煙や飲酒といった生活習慣がEoE発症に関与することが明らかになった。
EoEは主に先進国に多い疾患であるといわれているが、日本のEoE罹患率はこれまで報告されていたアメリカの白人やアジア系アメリカ人のデータよりも低く、EoE発症に遺伝的要因や生活環境が関与することが示唆された。
今後は、生活習慣のEoEへの関与について前向き試験で検証することにより、EoEの病態解明への寄与が期待されるとしている。