「今よりも未来のストレスが増えることはない」と信じる人は、深刻な先延ばし癖が少ないことを、東京大学大学院総合文化研究科の開一夫教授と、博士課程の柏倉沙耶氏らによる研究グループが発見した。
課題を先送りすることによって不適応な結果を招くとわかっていても先延ばしにしてしまう…。このような先延ばし癖は、私たちの日常生活に深刻な影響を与えることが示されている。これまでの研究によって、先延ばし癖のある人は一貫して「未来を軽視する傾向」があることが判明している。
先延ばし癖のある人たちはなぜ未来を軽視してしまうのか?これを明らかにするため、本研究では、過去・現在・未来の様々な時間軸におけるストレスレベルと主観的幸福度を時系列順に並べた「時系列的ストレス観」・「時系列的幸福観」という新たな指標を導入し、先延ばし癖のある人のストレスと幸福度を介した「時間観」を測定することを試みた。
「時系列的ストレス観」の類型は、下降型(未来にいくにつれてストレスは減る)、上昇型(未来にいくにつれてストレスが増える)、V字型(今が1番ストレスが低く、そこから離れるにつれてストレスが増える)、への字型(過去のある1点でストレスが1番高く、そこから未来にいくにつれてストレスは減る)の4種類に分類されることがわかった。類型と先延ばし癖との関係を確認した結果、下降型のグループで、深刻な先延ばし癖のある人の割合が有意に低いことが明らかとなった。
一方、「時系列的幸福観」については、下降型、上昇型、V字型、平坦型(どの時間軸においても幸福度が一定)に分類されたが、先延ばし癖との間に有意な関係は確認されなかった。
以上から、「今よりも未来のストレスが増えることはない」という楽観的な未来観を持つことが、深刻な先延ばし癖の改善に寄与する可能性が示唆された。また、深刻な先延ばしを減らし、将来のために行動できるようになるには、未来に希望を持てるようなサポートが有効である可能性も示唆している。