京都薬科大学病態生化学分野の石原慶一講師、秋葉聡教授らの共同研究グループは、これまでメカニズムが不明であったダウン症における脳での酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与していることを世界で初めて見いだした。これは、銅の量的変動がダウン症の病態に関与している可能性を示唆する新規知見だ。今後のダウン症の病態メカニズムの理解、治療法の開発に大きく貢献すると期待される。
ダウン症は約700人に1人の確率で発生する最も頻度の高い染色体異常として知られている。通常2本の21番染色体が3本(トリソミー)となることで精神発達遅滞や記憶学習障害といった様々な症状が現れる。これらダウン症の症状には酸化ストレス(酸化作用による有害作用)の亢進の関与が示唆されている。実際に、石原らはダウン症モデルマウスの脳における酸化ストレスの亢進を明らかにしていた。しかし、「ダウン症において、なぜ酸化ストレスが亢進するのか」については不明だった。
今回、共同研究グループは、金属イオンを含む多くの元素量を網羅的に解析できる「メタロミクス解析技術」を用いて、ダウン症モデルマウスの脳において銅が過剰に蓄積していることを発見した。さらに、銅低減食を与えることで、脳での酸化ストレス亢進や一部の異常行動を抑制することを見いだした。
今回の成果は、ダウン症の酸化ストレスの亢進やダウン症の症状において銅の蓄積の関与を示唆するものであり、今後、病態メカニズムの理解、治療法の開発に大きく貢献すると期待される。