東京大学の堀まゆみ特任助教らの研究グループは、全国調査により、日本の水道水はカルシウムやマグネシウムなど主要無機成分濃度が低い軟水で、その分布は地域によって大きく異なることを明らかにした。

 日本は水道水を飲用できる数少ない国の一つだが、その水質について一元的に網羅している公開情報は少なく、全国的な評価をしている研究は乏しい。そのため、水道水質調査は、汚染物質の確認だけでなく水質評価や公衆衛生に重要であり、水環境に関して社会的に必要不可欠な基礎データの提供につながる。

 研究グループは、2019年から2024年にかけて、日本全国47都道府県1564地点の水道水(終端の蛇口水)を採取し、カルシウム、マグネシウムなどの27種類の無機成分を測定。味に関係する硬度も評価し、それらの水質分布を示した。比較のため、ヨーロッパやアジアを中心に海外33か国194地点から水道水を採水して調査を行った。

 その結果、日本の水道水は他国よりカルシウムなどの主要成分濃度が低く、水の硬度の平均値は50.5mg/LでWHO分類では軟水に区分される。さらに、日本国内では地域によって分布は大きく異なり、中でも関東地方、特に千葉県で主要無機成分濃度が高い傾向を示した。一方、微量金属成分の検出傾向は地域ではなく蛇口ごとに異なり、供給配管や蛇口などのインフラによる影響が示唆された。また、水道水質基準に照合した結果、日本の水道水の水質は良好と判明した。

 今回の研究により、各地域の特性に応じた水道水の管理と改善策の基盤となる情報の提供が可能になる。日本の水道水に関する包括的な知見は、環境分野や水道消費者への啓発活動など幅広い分野への貢献が期待されるとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Distribution of inorganic compositions of Japanese tap water: a nationwide survey in 2019-2024

大学ジャーナルオンライン編集部

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