山形大学の玉手英利学長は、国立大学協会が国立大学の危機的な財務状況を訴える声明を発表したのを受け、今議論すべきことは「教育の機会均等に向けて公費支援を拡大することだ」とする所感を山形大学のホームページ上で発表した。
山形大学によると、玉手学長は国立大学の財務状況が全国的に厳しさを増す中、地域の経済規模が小さい地方の国立大学は外部資金の調達や固定資産の有効活用で大都市圏の大学以上に苦しい立場に追い込まれていると主張した。
東京都の大学進学率が70%を超す一方、山形県など東北地方の進学率が40%台にとどまるのは、所得格差や進学前の教育機会の差があるためと指摘した。地域格差が大きい中、受益者負担で教育の質を高めようとする競争主義的な考えが広まることに対しては、強い不安を訴えている。
国立大学の授業料引き上げが社会の注目を集めているが、その議論には地域格差の視点が欠けているとし、人口減少地域の教育を支えている大学にはより一層の支援が必要と強調した。今議論すべきことは、「授業料の引き上げではなく、地域格差を是正して教育の機会均等を実現するための公費支援拡大だ」と主張している。
国立大学協会は6月、国の財政がひっ迫する中、運営費交付金の減額が大学の財務を圧迫し、大学の自助努力が限界に達しようとしているとする理事会の声明を発表した。
山形大学は2022年10月に「やまがた社会共創プラットフォーム」を創設、玉手学長はその協議会の会長を務める。山形県内の15の高等教育機関、山形県と35の市町村、県内の11の主要関係団体が加盟する大規模な取組みで、地域の持続的発展を目指して、県内公私立大学とともに地域の高等教育を支え、地元の産業界、金融界、医療界、山形県及び県内自治体と連携し「オールやまがた」で地域の課題解決と新たな価値の創出に取り組んでいる。特に「山形県内大学生の地元定着率向上(Uターン学生含む)」「山形県内高等学校からの県内大学進学率向上」「女性の活躍・地域定着」を重点事項に掲げている。