明治大学農学部生命科学科の中村孝博教授らの研究グループは、20代健常女性において、月経周期のステージにより『睡眠覚醒リズム』が変化することを発見した。
睡眠を構成する「レム睡眠」や「ノンレム睡眠」の量の変化などを意味する睡眠構造は、月経周期中に変化することは知られていた。しかし、一日の中での睡眠が占める割合などを意味する『睡眠覚醒リズム』は、月経前症候群(Premenstrual syndrome: PMS)である女性では、変化があることが報告されていたが、月経周期が安定し月経に伴う症状や不定愁訴が少ない女性において結果は報告されていなかった。
本研究では、スマートウォッチを用いて、10人の20代健常女性を対象に『睡眠覚醒リズム』に対する月経周期の影響を長期かつ客観的に調査を実施。
睡眠中点と呼ばれる「入眠」と「起床」との中間の時刻と『睡眠覚醒リズム』の頑強性を意味するQP値との間で強い負の相関関係が認められ、月経周期の日数と社会的時差ボケ(時間)との間で、強い正の相関が認められた。これらの結果から、 遅寝遅起き習慣のある健常女性は睡眠覚醒リズムが乱れ、不規則な『睡眠覚醒リズム』が、月経周期を延長させる可能性があることが示唆される。
これまで軽視されがちであった女性特有の生理現象のメカニズムの解明は、「少子化」などの社会的問題を解決する糸口となる研究である。そして、月経周期により『睡眠覚醒リズム』が変化することは、女性特有の睡眠障害などの概日リズムに関連した疾患の発症機構の解明やその予防策の考案に寄与する発見となっている。また、女性の健康増進に対して新しい治療方法の確立、治療薬の開発などにもつながると考えられる。
今回の結果は、日常的に使用しているスマートウォッチを身に付けるだけで排卵日を特定できるアルゴリズムを構築することにつながり、今後は大規模なデータを取得しビッグデータの解析、ディープラーニングなどを取り入れアルゴリズムを構築することにより、近い将来スマートウォッチで妊活が可能となると考えられる。
論文情報:【Sleep and Biological Rhythms】Menstrual variations of sleep–wake rhythms in healthy women